07 1月 2014

1/5「ソ連のCMフェスティバル」

新年あけて1月5日、ペテルブルグ市内の映画館ロージナにて「ソ連のCMフェスティバル(Диафильм - Фестиваль советской рекламы)」という映画祭が行われました。優れたキュレーターの存在を感じさせる、いい企画でした。何よりも前半部の畳み掛けるようなリズムがたまらない。
原題にある「ヂアフィルム」とは、70-80年代のソ連で超短尺映像に限った映像制作をしていた会社。ウィキによると、カラーなら30コペイカ、白黒で20コペイカだったそう。



社会主義のソ連でCM??という疑問が、まず企画名を見た瞬間に生まれてくるでしょう。その通り。「ソ連なのに」CMが存在したという事実(しかしそもそもソ連黎明期からソ連のイデアとアメリカのイデアは「効率性」という一点で結びあわされていたことを考えれば自然に出てきてよい方向性でしょう)。
ポスターのキャッチコピーは「売らないCM、売れないCM(Реклама, которая не продает и не продается.)」。頭いい。こんなに要を得たキャッチコピーがあったものか。いわずもがな、CMとは商品販促のための機械ですが、大多数のソ連市民にとってこれらのCMにでてくる商品たちの多くは「夢」に終わるでしょう。なぜならそもそも生産が追いついていない、よし買えるとしても順番を待たなければならない、そもそも売っていない、などの事態が容易に想定できるからです。「夢」に費やされる市民の「夢」、それはどこまでも夢であり、何ものも生み出さない。そこには剥き出しにされ宙づりにされた、孕むことのない欲望があります。それを露わにしてしまうこの企画は、残酷だが貴重なものです。
そしてなにより楽しかった。客層は、当時を知る層よりも、はるかにソ連を知らない若い層が多い感触です。観客の誰もがCMたちを「楽しめている」のは絶え間なく上がる笑い声でわかるでしょう。

それでは、このフェスティバルを構成する作品の中からおすすめをいくつか紹介しようと思います。全体としては、ソ連で70-80年代に製作された50作弱の短いCMと、後半の反アルコール・反喫煙が主なテーマである長尺ドキュメンタリー及び政府公報から成ります。全部を記憶するのは無理ですが、1/6に行われた2回目の上映にて多少はメモしつつ見ることが出来たので、それが助けになりました。
それでは以下に紹介していきます。ロシア語がわかるとなおおもしろいはずですが、ばーと見るだけでもあまりのポップさに踊りだしたくなることでしょう。
以下動画多数につき、開くと重いので注意してください。

まずはこのフェスティバルの予告篇。中毒性高い!





①警察のリクルートCM「法の人々」

最後までみると、これが警察のリクルートであるとわかります。つまり、最後にならないとわからない!この「なんのCMかわからない」感じ、ポップかつキャッチーな曲でちゃきちゃき流れる露骨なプロパガンダ!
これはフェスティバルでは最後に流されたものですが、私としてはこれがベストであると断言したい。このワクワク感は、何度見てもすばらしい。最後のテーマソング「法の人々」の美しさ!TSUTAYAでアクション映画を見る前に、まずこれを見てほしい。これがソヴィエトの「本質力」だ。ハリウッドはもっと回りくどく、わかりにくく、同じことをやってるだけなのだ。


②テープレコーダー「スプートニク403」
こんなに洒脱なCMは、現在でも探すのは難しいでしょう。最初から恐ろしいほどのうさんくささ(ギターの手つき!)を感じさせつつ、最後でスコンと抜く!おそろしいCMです。

③キャンピングカー「スキフ」
BGMが、なんとビートルズ!禁止されていなかった。何年のCMか、どこでながされていたのか、により状況は違うと思いますが、わりかし衝撃がありました。

④殺虫(蛾)剤「スプロゾリ」

殺虫剤をズラッと並べて笑顔、はヤバい。
同系統の消臭剤「トイレクス」(商品名、おい!)
http://www.youtube.com/watch?v=BnErvpd7o2I


⑤ポマードのCM
こんなお洒落なCMが、ソ連にもあった

⑥「この男性たちを結びつけているのは何でしょう?・・・」
ウールですよ、というオチ。音楽も景気いい。

この辺にしといて、あとはこちらのリンクから。
http://www.youtube.com/user/TheSMStudio
このSMスタジオというユーザーが、何本か集めています。

個人的にはエレクトロニカ(コンピュータ?)という製品の宣伝が非常に良かったのですが、見つかりませんでした。DVD化を熱烈に希望します。(ちなみに「電化」「電気」というテーマは、「共産主義とは、ソヴィエト権力プラス全土の電化だ」という言葉によって、緊密にレーニン、権力、共産主義に結びつけられます。)

参考までに:アクセンチュク「プラス・電化」
http://www.youtube.com/watch?v=aWUt-VNFJkI
これに近いものを感じました。

日本ではアップリンクが数年前「ロシア革命アニメーション」という企画をやって、DVDも出しているので、これもぜひやってほしい。このアニメ企画は、たしかアメリカ経由(アメリカでの企画を日本に輸入)のものだったはずで、第一人者不在の感が否めませんが、自発的な過去参照ということでこの「ソ連CMフェスティバル」はもうすこし面白い。まだ完全に過去になっていない時代なので、自分の記憶としてこれらの映像を持っているひともいるわけです。ちょっと可能性が広がっています。
プロパガンダもCMも、方向性は違うが、等しく「陳腐化」です。陳腐は、世界をあからさまに、必要以上に生々しく再-現するがゆえに、それはそれは大きな力を得て訴えかけてきます。それはカッコを何重かした「リアリズム」に他なりません。


ちなみに最近お気に入り、お蔵入りしたエストニア製ロシア人観光客「誘致」のためのCM。
http://www.youtube.com/watch?v=3nx7cMNDEAs

ほんとは来てほしくないのがバレバレだ(ちなみにエストニア、タリンはほんとうにロシア人観光客の数が多くて、観光地ならたいていどこでもロシア語が通じます。あとラトヴィアのリガもでした。ぼくは怖くて使いませんでした)。

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