新年あけて1月5日、ペテルブルグ市内の映画館ロージナにて「ソ連のCMフェスティバル(Диафильм - Фестиваль советской рекламы)」という映画祭が行われました。優れたキュレーターの存在を感じさせる、いい企画でした。何よりも前半部の畳み掛けるようなリズムがたまらない。 原題にある「ヂアフィルム」とは、70-80年代のソ連で超短尺映像に限った映像制作をしていた会社。ウィキによると、カラーなら30コペイカ、白黒で20コペイカだったそう。 社会主義のソ連でCM??という疑問が、まず企画名を見た瞬間に生まれてくるでしょう。その通り。「ソ連なのに」CMが存在したという事実(しかしそもそもソ連黎明期からソ連のイデアとアメリカのイデアは「効率性」という一点で結びあわされていたことを考えれば自然に出てきてよい方向性でしょう)。 ポスターのキャッチコピーは「売らないCM、売れないCM(Реклама, которая не продает и не продается.)」。頭いい。こんなに要を得たキャッチコピーがあったものか。いわずもがな、CMとは商品販促のための機械ですが、大多数のソ連市民にとってこれらのCMにでてくる商品たちの多くは「夢」に終わるでしょう。なぜならそもそも生産が追いついていない、よし買えるとしても順番を待たなければならない、そもそも売っていない、などの事態が容易に想定できるからです。「夢」に費やされる市民の「夢」、それはどこまでも夢であり、何ものも生み出さない。そこには剥き出しにされ宙づりにされた、孕むことのない欲望があります。それを露わにしてしまうこの企画は、残酷だが貴重なものです。 そしてなにより楽しかった。客層は、当時を知る層よりも、はるかにソ連を知らない若い層が多い感触です。観客の誰もがCMたちを「楽しめている」のは絶え間なく上がる笑い声でわかるでしょう。 それでは、このフェスティバルを構成する作品の中からおすすめをいくつか紹介しようと思います。全体としては、ソ連で70-80年代に製作された50作弱の短いCMと、後半の反アルコール・反喫煙が主なテーマである長尺ドキュメンタリー及び政府公報から成ります。全部を記憶するのは無理ですが、1/6に行われた2回目の上映にて多少はメモしつつ見ることが出来たので、それ