サヤト=ノヴァ×タルコフスキー
以下に訳出したのは、脚注に記載した底本より、サヤト=ノヴァ詩の、タルコフスキー(父)によるロシア語訳からの重訳です。旧かなにしたのは何となく、そっちのほうが雰囲気でるからです。すみません。
ナボコフなんかは翻訳者があんまり芸術家肌ではいかん、というようなことを言ってるわけですが、ソヴィエト時代には、発禁扱いになった一流の詩人・作家が、翻訳で食いつなぐという事態がままあったわけで、許してやってくれ。それから重訳で申し訳ないです。
あなたのさばきに
あなたのさばきに こころはよろこぶ
あなたはけだかき帝(みかど) グルジアのよろこび
ひとはいふ わたくしにはがつかりだと
ろくでなしのくず どくのつまつた いどがわたくしだと
きをわるくするな 謂つてしまわねば ならぬのだと
ひとりもののわたくし どこでうけいられようか?
わたくしは無粋なおとこ 突かれても こたへは待たれておらぬのだ
こうしてわたくし よの ものわらひの まとになる
こころをひらけど わたくしは こんなことばをなげかけられる
「おまへは はたけのうねのはざま そこにある 不毛の丘だ!」と
みかどのまへに きよらかなるころも まとひて立つ
わたくしのサアズは うずうずしてゐる
わたくしは ことばのいみをわすれてしまふ!
帝は冷酷にも わたくしを 向かふへおひやる
「おまへは きたならしい羊毛 よの わらひものだ!」
山と 山とが であふといふ
かみさま あなたのお慈悲を わたくしに!
さばきには あたひせぬ わたくしであろうか?
帝の 御手で 死罪になったほうがよい
あなたは わたくしの師 わたくしのよろこび
さいはひかな
さいはひかな 橋をたてたものよ
とおるものは 橋にあはせて いしをおいて ゆくだらう
わたくしは 民にいのちを なげだした このために
わがおとうとは 墓碑を わたくしのため たてるだらう
こころのうつくしきもの たましひのけだかきものが
ほこりたかく立ち あしの枷を とりはらう
わが勇者は 鉛の弾丸(たま)を さぐりあてる
商い人の つくえに たからかに それをおくのだ
さきゆきの杳とせぬ 運命(さだめ)の喇叭は うたふ
ほまれたかき族(うから)は その財を うしなつたと
羊毛が要つたものは いま
たへなる絹の錦を 宝箱のなか かくすのだ
善と悪とが かみさま ばらばらになつてしまつた!
よこしまな君主から まもりたまへ
ちかごろは 敵にうらみなど もつて…
ナボコフなんかは翻訳者があんまり芸術家肌ではいかん、というようなことを言ってるわけですが、ソヴィエト時代には、発禁扱いになった一流の詩人・作家が、翻訳で食いつなぐという事態がままあったわけで、許してやってくれ。それから重訳で申し訳ないです。
あなたのさばきに
あなたのさばきに こころはよろこぶ
あなたはけだかき帝(みかど) グルジアのよろこび
ひとはいふ わたくしにはがつかりだと
ろくでなしのくず どくのつまつた いどがわたくしだと
きをわるくするな 謂つてしまわねば ならぬのだと
ひとりもののわたくし どこでうけいられようか?
わたくしは無粋なおとこ 突かれても こたへは待たれておらぬのだ
こうしてわたくし よの ものわらひの まとになる
こころをひらけど わたくしは こんなことばをなげかけられる
「おまへは はたけのうねのはざま そこにある 不毛の丘だ!」と
みかどのまへに きよらかなるころも まとひて立つ
わたくしのサアズは うずうずしてゐる
わたくしは ことばのいみをわすれてしまふ!
帝は冷酷にも わたくしを 向かふへおひやる
「おまへは きたならしい羊毛 よの わらひものだ!」
山と 山とが であふといふ
かみさま あなたのお慈悲を わたくしに!
さばきには あたひせぬ わたくしであろうか?
帝の 御手で 死罪になったほうがよい
あなたは わたくしの師 わたくしのよろこび
さいはひかな
さいはひかな 橋をたてたものよ
とおるものは 橋にあはせて いしをおいて ゆくだらう
わたくしは 民にいのちを なげだした このために
わがおとうとは 墓碑を わたくしのため たてるだらう
こころのうつくしきもの たましひのけだかきものが
ほこりたかく立ち あしの枷を とりはらう
わが勇者は 鉛の弾丸(たま)を さぐりあてる
商い人の つくえに たからかに それをおくのだ
さきゆきの杳とせぬ 運命(さだめ)の喇叭は うたふ
ほまれたかき族(うから)は その財を うしなつたと
羊毛が要つたものは いま
たへなる絹の錦を 宝箱のなか かくすのだ
善と悪とが かみさま ばらばらになつてしまつた!
よこしまな君主から まもりたまへ
ちかごろは 敵にうらみなど もつて…