17 10月 2016

ボリス・ルィジイの詩

おとこのこ

別離の痕跡をもとめて 手の爪をなぞる
春には林檎の木が花を咲かせる
ヴェスナ=春が鳴らすモノラル音声
犯罪者の符丁の響きが 不安を煽りすすり泣く

学校の机に座るようにして カード遊び
セリョーガ・Lが窓からおしっこする
このようにすべてが快い まるで明日
古い映画のように 戦争が始まってしまったかのよう



なんでもたくさんあった 音楽もいっぱいあった
映画館のチケット売り場にはほとんどいつもチケットがあった
赤い路面電車に乗るのは 癇癪持ちのフーリガン
どこともない場所へと向かう

音楽は少なくなった
乗客も。路面電車は車庫に入ったのだから。
それでぼくらも外へ出た 映画館から秋のなかへ
そして散歩したのです ながい

人生の並木道を。夏についての
映画だった、しあわせについての映画。だがふしあわせについてではなかった。
最後列には ビールと煙草。
ぼくは絶対に最前列には座らないだろう。



ロシアは 古い映画だ。
なにも思い出せなくても それでも
後景に老兵が
腰かけ ドミノをしている。

たくさん飲んでぼくが死んでしまったら
ライラックは風に揺れるだろう
それで永遠に 半ズボンを履いて
中庭を駈けまわる あの男の子は消え去ってしまう

白い眉の老兵は
甘いお菓子をポケットにしまうのだが
思うことになる どこに行った?と
それでぼくは最前景に出ていった。


*「ヴェスナ=春」:ソ連時代に発売されたポータブルカセットプレーヤーの名前。

Рыжий, Борис Борисович
из собрания стихов "...и все такое..."



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