30 5月 2016

ボリス・パステルナークの詩

2016年5月30日更新

他の人を愛することは 重い十字を背負うことだ
あなたはまっすぐに うつくしい
あなたの魅力の その謎は
生きることの 謎解きにも等しい

春 あの夢この夢が擦れちがい さらさらと音が聞こえる
知らせと真実のささめきも
そうした原理(アルケー)の族の生まれなのだ、あなたは
あなたの存在する意味は 大気のよう 欲にとらわれぬ

ちょっとしたことで夢から覚め 目を開けること
取るに足らぬ埃のようなことばを こころから払い落とすこと
そしてこれから先 埃で汚れぬよう生きること
こうしたことはぜんぶ 狡猾さとしては些細なものである

* * *

二月だ。インクをとって 泣け!
二月について さめざめと 書くんだ
ざあざあ とどろく みぞれが
黒い 春になって 燃えているうちに

馬車を呼ぶんだ。 六十コペイカで
教会の鐘の音を抜け 車輪の軋む音を抜け
あそこへ駆けていくんだ 激しい雨が
インクと涙よりもまだうるさく音を立てるところへ

焦げてしまった梨のように
幾千ものカラスどもが 樹々から
水たまりに落下し 目の奥底へと
乾いた悲しみを ぼろぼろ崩すところへ

その悲しみの下 雪の融けた地面が黒ずんでゆく
風は 悲鳴で ずたずた
手の向くまま だがそれだけ 誠実に
詩が さめざめと 書かれていく

* * *

詩人の死


嘘だと思った 「ふざけたことを」と思った
2人、3人 と言わず みなから
知らされることとなった。日付の止まった
詩の一行のなかで 同列に置かれていたのは、
女役人の家 商家
中庭 木々 そして 日差しのせいで
ふらふらになりながら 激高したかのように
「馬鹿ども もう決して
罪つくりに嘴を突っ込むなよ」と
叫びたてていた 木の上にとまったあのカラスたち。
そしてその日は
つい近ごろのことのよう。つい1時間前のような。一瞬だけ
前のような。隣の屋敷、隣の
垣根、木々、カラスの騒がしさ。
ずたずたになった引き網の網目のような
涙にぬれた断層が 顔のうえだけにある。

そんな日、無邪気な日だった、あなたが過ごした
昔の何十もの日々よりもまだ無邪気な。
ひとは群がって、我先にと列をなしたのだった
まるで銃の合図で 整列させられたみたいに。

魚雷の爆発があって もみくちゃになって
鯉やらカマスやら 排水溝から吐き出されたみたいだ
スゲの茂みに仕掛けられたネズミ花火が破裂する
結婚した者どもの嘆息のようだ

あなたは眠っていた 寝床を中傷のうえに広げて
眠っていた 動揺を知らず 静かだった―
美しい 22歳の男
あなたの4部詩が予言したように

眠っていた 頬をまくらにくっつけて
眠っていた 全速力で くるぶし全体を賭けて
もう一度 もう一度 跳びかかっていく
若き伝説の類列のなかへ

伝説のなかへ跳びこんでいくと あなたはますます燦然となる
ひと跳びでそれを達成したのだからなおさらだ
あなたの銃の一撃は 腰抜けどもを従える
エトナ火山のようだった

友らはといったら 口論に磨きをかけていたのだ
生とわたしとが 隣にいることさえも忘れて

でもそれからどうした? なぜあなたはそいつらを
壁に押しつけ 地上から抹消したのか? そして恐怖はなぜ
あなたの火薬を ただの塵だと偽るのか?

だがクズどもにはその恐怖だけが尊いのだ。
山と積もる議論があるとはいえ
虚弱の身にはあまりに速い
大きな出来事の奔流が
境界を越えて流れてゆかぬようするためだ

そんなふうに 低俗さが生活なる灰色のクリームを
練り固めて トヴォロクを仕立てるのである

* * *

*Пастернак, Борис Леонидович (1890-1960)

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